
ご存じの通り、日本の人口は既に減少しています。国立社会保障・人口問題研究所によれば、2065年には8,808万人まで減少する見込みであり、社会保障などさまざまな面において大きな影響を与えるものと想定されています。
人口減少は社会保障の他、地方財政にも影響を与えます。生産年齢人口の減少が税収減につながり、インフラに関しても整備がままならない状況となっていくかもしれません。こうなると、不動産にも影響を与えることでしょう。郊外では空き家が増え、地価が下がっていく可能性があります。
このような問題に対処するために、各地方自治体においてはコンパクトシティ構想を掲げるケースが多くなってきています。いったいこのコンパクトシティとはなんでしょうか。また、このコンパクトシティの構想が将来的には不動産価格に影響を与える可能性があります。どのような影響が想定されるのでしょうか。
コンパクトシティ構想とは?
まず、コンパクトシティ構想について解説していきましょう。コンパクトシティ構想とは、都市の中心部に公共施設や商業施設、住宅などを集約し、人口が減少しても都市機能が維持できるコンパクトな街を目指すものです。
これまでのように郊外に住宅地を開拓していくのではなく、住宅を中心部に集約し買い物などにも不便のない地域の活力を維持する社会にしていこうという考え方がもとになっています。住民の利便性向上、財政負担の軽減、行政の効率化の他、公共交通機関の利用を促進することで環境にも配慮しています。
実際に先行する都市の例にはどのようなものがあるか?
実際にコンパクトシティ化に取り組んだ事例としては、富山市や金沢市、青森市などがあります。ここでは、富山市の事例をもとに解説していきましょう。
富山市では、世帯当たりの乗用車保有台数が全国トップクラスであり、郊外に人口が拡散していたため、中心市街地の活性化と公共交通機関の整備が急務でした。これは、今後の人口減を見据えた時に、高齢者のように乗用車利用が難しい世帯では、不便な街となる恐れがあったためです。
そこで富山市では、公共交通を軸としたコンパクトな街づくりを進めていきます。JR富山港線の廃止に伴い、低コストで敷設、運行できる「富山ライトレール(LRT、次世代型路面電車)」を導入しました。バリアフリー車両の導入により、高齢者や障害者にも利用しやすくなっています。また、CO2排出量が少ないとうメリットを生かし、運行本数を増やしています。
この結果、開業前と比べて平均利用者数は大幅に増加し、高齢者のライフスタイルの変化にもつながりました。中心部にはグランドプラザ(全天候型の多目的広場)を配置し、中心市街地の利便性を高め、活性化につなげたのです。
エリアによっては賃貸需要や土地価格が大きく下がる可能性もある
中心部への拠点集約が進むと、当然エリアによっては賃貸需要や土地価格が大きく下落する可能性がでてきます。
例えば、中心部から外れた郊外では、住む人が減れば減るほど地価は下がる恐れが高くなっていきます。そのため各都市においてどのようなコンパクトシティ構想を描いているのか、確認する必要があります。
アパート投資をする際はエリアの精査が重要
このように、コンパクトシティ構想が将来の街のあり方を変える可能性があります。中心部は活性化し、地価の上昇もしくは横ばいにつなげられる可能性もあるものの、郊外ではその逆の事態が発生するおそれがあります。
そのため、もしアパート投資を行う場合はエリアの精査をしっかり行いましょう。空室が発生しては元も子もありません。今後も住む街として機能する場所にターゲットを絞った方が無難といえます。どの地域にどのような施設ができそうか、その構想は実現できるのかどうか、成功するのかどうか、ご自身なりのシミュレーションを行ってみるといいでしょう。
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