
アパート経営は、「濡れ手に粟」で楽に儲けられる商売ではありません。高度経済成長期のように、アパートを建てれば儲かった時代もありましたが、今は状況が異なります。しかし堅実に経営すれば、収益を安定的に確保できる可能性が高いことも事実です。ここでは、アパート経営に失敗しないためのポイントを改めて解説します。
1. アパートの特性を理解すること
アパートはマンションと異なり1棟所有で投資することが通常であったり、独身者向けのIR系なら居住者が頻繁に入れ替わったりします。同じ集合住宅でもマンションとは性質が異なります。まずアパートならではの特徴を把握することが大切です。
2. 物件の構造をよく検討すること
アパートには、木造、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)など多様な構造があります。どの構造にも一長一短があります。躯体の堅牢性、防音性、防寒・遮熱性、間取り変更の柔軟性、コストなどから自らの経営戦略を明確にして、それに適した構造を選択することが重要です。
3. 立地・環境を見極めること
不動産ビジネスでもっとも重要な要素は立地です。通勤・通学など交通の利便性、買い物・外食・娯楽・通院など日常生活の利便性、治安・騒音(周辺施設)・自然などの環境を評価して、適正家賃で利益を出せる土地を調達する必要があります。
4. 資金調達計画を綿密に練ること
アパートの建築・運営資金は、原則として自己資金と借入金で賄います。自身が所有する他の財産や収入源、家族構成、目標とする経営規模などを考慮して資金調達計画を練ることが大切です。借入金融機関の選定も重要です。借入金残高1000万円で金利が0.1%違えば1年間で10万円、10年間で100万円の差が出ます。
5. 家賃戦略を練り上げること
立地、面積、間取り、設備などの条件が良くても相場より家賃が高ければ、入居者集めに苦労しかねません。コスト削減に努め家賃の値下げ余地を確保したり、敷金・礼金・更新料などの透明性を高めたりすることが大切です。
6. 維持管理の手を抜かないこと
アパートは建てたその日から劣化します。隣接地で同時期に建てたアパートでも管理の優劣により躯体の劣化度合いに大きな差がつきます。物件価値を維持し、長期的かつ安定的に入居者を確保するためには丁寧な管理が欠かせません。また管理会社へ任せるのはいいのですが、経営者が主体的に管理計画を立案して、不要なコストを削減することも重要といえます。
7. 災害対策にも目配りすること
日本は災害大国です。地震、台風、水害などの天災だけでなく、火災や事故による人災も一定頻度で発生します。ハザードマップなどから災害発生リスクを予想するとともに、地震や火災などに強い構造や建材を選択したり、災害対策設備を備えたりすることが求められます。また火災・地震保険に加入して災害による損失へ備えることも必要です。
8. アパート建築時から出口戦略を考えること
アパートには寿命があります。建築時点から物理的な劣化が始まり、いずれ居住に適さなくなります。居住可能でも間取りや設備が陳腐化して、入居者が集まらなくなるかもしれません。地場産業の衰退や大学の移転などから地域の住宅が大幅な供給過剰に陥ることもあります。こうした要素を勘案してアパート建築時から売却・建て替え戦略を検討することが大切です。
アパート経営は決して楽なものではありません。それなりの努力や苦労を伴うものであり、不幸にしてリスクが顕現化し損失を被る可能性もあります。アパート経営に失敗しないうえでもっとも重要な点は、他人(業者)任せるだけでなく、自らも主体的に取り組むことです。そうすれば人生設計が狂うほどの損失を被る可能性は低くなり、堅実な資産形成への道を歩むことができるでしょう。
【失敗しないコツ】シリーズ
・アパート経営で失敗しないコツ #1(アパートとマンションの違い編)
・アパート経営で失敗しないコツ #2(物件編)
・アパート経営で失敗しないコツ #3(立地・環境編)
・アパート経営で失敗しないコツ #4(資金調達編)
・アパート経営で失敗しないコツ #5(家賃編)
・アパート経営で失敗しないコツ #6(管理編)
・アパート経営で失敗しないコツ #7(災害編)
・アパート経営で失敗しないコツ #8(売却・建て替え編)