
アパート経営には適切な管理が欠かせません。建物の維持管理だけでなく、入居者の募集や家賃の回収など、さまざまな業務があります。これらを効果的、効率的に行うことが、アパート経営に失敗しないための鉄則です。
自主管理のメリット・デメリット
アパートやマンションなどの集合住宅の管理をオーナーが直接行うことを、自主管理と呼びます。実際には、電気・ガス・水道などの設備点検・補修、共用部分の清掃・警備、入居者募集、家賃回収などの実務の大半はそれぞれの専門業者へ委託しますが、それらの業者選定や管理統括をオーナーが担います。
自主管理の最大のメリットは、コストを抑制できる点にあります。管理業務全体の統括だけでなく、電球交換など簡単な設備点検・補修、清掃、資金管理、帳簿作成などを自分で行えば、相応のコスト削減になるでしょう。また管理業務に携わることにより、物件の維持管理費や入居者の実態を詳細に把握できる利点もあります。
一方、自主管理の根本的なデメリットは手間がかかることです。個別物件の管理に当てる時間が長くなれば、他の仕事に手が回らなくなります。兼業でアパートを経営したり複数物件を所有したりする人にとっては、かなり大きな負担となります。入居者のクレーム対応や個別業務の委託先管理の手間もバカになりません。
委託管理のメリット・デメリット
オーナーと不動産管理会社(PM会社)の間でマスターリース契約を締結して、当該PM会社に管理業務を一任する方法(委託管理)もあります。
この場合の最大のメリットは、手間がかからないことです。設備点検・補修、清掃、警備、家賃回収などを担う委託業者の選定管理、帳簿作成、資金管理、入居者募集、クレーム対応、家賃交渉などはすべてPM会社が行います。オーナーがすべきことは、個人の税務申告くらいです。
またPM会社は不動産管理のプロであるため、素人のオーナーよりも効果的、効率的な管理ができると考えられます。
一方、この方式のデメリットはコスト削減余地が限られることです。オーナー自身が動いて清掃や家賃回収などのコスト削減を図ることはできません。PM会社と委託料の減額交渉をしたり、より委託料の低いPM会社に乗り換えたりする以外にコストを削るのは難しいでしょう。
このため、収益力の弱い小型物件を保有するオーナーには自主管理の方が向いているかもしれません。
不動産管理会社は実績重視で選定
とくに兼業でアパート経営をしたり複数物件を所有したりするオーナーの場合、合理的な費用で安心して管理業務を一任できるPM会社を選定することが極めて重要になります。
優良なPM会社を選ぶためには、複数の業者に対し見積書の提出を求め比較検討することが欠かせません。
PM会社の評価は主に過去の実績に基づき行いますが、そのポイントは知名度、業歴、規模だけではありません。不動産は個別性が強いため、得意な物件タイプや地域を確認することも重要です。また、自身の所有物件の近くで、アパート管理の経験が豊富なPM会社に見積もりを依頼すべるとよいでしょう。大手でもアパート管理の経験が乏しい、主要なテリトリーが異なるなどがある会社は、有力な候補になりません。逆に中小でも特定地域のアパート管理に特化している会社は期待が持てます。
アパートと飲食店の経営には共通する要素があります。1棟(1店)しかなければ、経営者が何でも自分一人で対処できます。しかし数多くのアパート(店舗)を管理しようとすれば、経営者は組織を整備して他人に仕事を任せなければなりません。
経営者の役割は、適材適所で人を配置して円滑な業務運営を推進することです。不動産管理では、適切なPM会社を選定して業務運営状況の把握・評価に徹することが重要です。
【失敗しないコツ】シリーズ
・アパート経営で失敗しないコツ #1(アパートとマンションの違い編)
・アパート経営で失敗しないコツ #2(物件編)
・アパート経営で失敗しないコツ #3(立地・環境編)
・アパート経営で失敗しないコツ #4(資金調達編)
・アパート経営で失敗しないコツ #5(家賃編)
・アパート経営で失敗しないコツ #7(災害編)
・アパート経営で失敗しないコツ #8(売却・建て替え編)
・アパート経営で失敗しないコツ #9(総括編〜資産形成に向けて〜)