
ここまで8回にわたりアパート経営の契約から管理までを実際に大家になったレベルまでに落とし込んで解説してきました。最終回の今回は、通して全体を振り返ってみましょう。
#1(物件決定編)
不動産投資に興味を持ったら、まず学ぶべきは賃貸業の損益構造とキャッシュフローの計算です。減価償却とローン返済がどのように影響を与えるのか。この計算ができていれば大きな失敗はありません。
次に、情報収集をするとともに販売会社とコンタクトし、物件提案を受けます。物件の紹介を受けたら、はやる気持ちを抑えて#1で紹介した4つのチェックのうえ、希望に沿った物件に絞り込みます。
#2(契約編)
物件が決まれば、売買契約と建築工事請負契約です。契約書の内容は、業界標準が確立していますので神経質になることはありません。将来に備えてきちんと保管します。
その後、アパートの賃貸管理契約を締結しますが、解約条件を確認しておきます。融資審査に通らなければ、まだまだ正式な成立ではありません。気を抜かず金融機関に必要書類を提出しましょう。
#3(審査編)
高額なローンでドキドキしますが、投資運用のための借金は「良い借金」です。実際に破綻するのは0.2~0.3%程度といわれており、前向きに捉えるようにします。
アパートローンは一般的に給与の20~30倍が限度額といわれています。会社の倒産やリストラ、転職などリスクはありますので、最初から限度額いっぱいのローンは避けたほうが賢明でしょう。
融資が実行され、初回支払いが終わると工事着工です。だんだん大家になる日が近づいてきました。
#4(建築編)
建築は約半年をかけて、基礎工事に始まり、躯体(くたい)、屋根、床下、外装、内装と進んでいきます。
「サラリーマン向け新築アパート投資法」では、この期間は大家のすることはあまりありません。徐々に出来上がるアパートを見物しながら、職人さんへ差し入れをするなどの気配りをします。自分の夢が形になっていく、とても楽しみな期間といえます。
#5(入居者募集編)
アパートが完成すると晴れて大家となります。ただ、空っぽのままでは収入を生んではくれません。建築と並行して募集活動をしておきます。
入居問い合わせ、見学対応、入居審査、賃貸借契約と手続きはありますが、心配は無用です。管理会社にお任せで大丈夫なのはありがたい所です。
#6(収入編)
家賃が通帳に記載され始めると大家になった実感が湧いてきます。副収入はとても嬉しいものです。
運営が軌道に乗ったら、事前に立てた損益計算をしてみます。事業収支とキャッシュフローの違いを実感する瞬間です。
アパートは長く収入をもたらしてくれますが、賃貸業というビジネスでもあります。時間をかけて、売却(出口)という戦略を取るのか、長く持ち続けるのか、じっくり考えましょう。
#7(経費・節税編)
年を越すと確定申告が待っています。面倒ですが経営者になった証です。アパート経営では「青色申告」の複式簿記がおすすめです。専従者給与や特別控除などのさまざまな特典が受けられます。
経費コントロールもうれしい副業のメリットの一つです。自宅家賃・交際費・車両費・旅費交通費などを税務上「合理的な基準」の範囲内で経費にします。煩雑ですが経営者の嬉しい悲鳴といえます。
#8(管理編)
日々の運営は管理会社にお任せでも問題ありませんが、いざという時に交渉、提案できることは非常に重要です。管理会社に「できる大家さん」と思ってもらえることがアパート経営成功の秘訣です。
退去時の修繕は家賃の2~3カ月分を目安にします。築後12~15年には大規模修繕が待っています。目先の収入に浮かれずに、アパート経営は時間軸の長いビジネスだということを認識しておきましょう。
さあ、準備はできましたか?
ここまで、大家になるまでを解説してきました。かなり具体的にイメージいただけたのではないでしょうか? ただ待っているだけでは成果は訪れません。さあ、リスクリターンを把握したうえでその一歩を踏み出してみませんか? きっと不動産を学んでよかったと思えるはずです。
【もし大家になってみるなら?!】シリーズ
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #1(物件決定編)
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #2(契約編)
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #3(審査編)
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #4(建築編)
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #5(入居者募集編)
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #6(収入編)
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #7(経費・節税編)
・もし大家になってみるなら?!アパート経営の契約から管理まで #8(管理編)