
みなさんは、アパートとマンションの違いをご存じでしょうか。いずれも法令で規定された言葉ではないため、厳密な定義はありません。
〇〇アパートメントという名前のおしゃれなデザイナーズマンションもあれば、××マンションという小型の共同住宅もあります。しかし経営目線でみれば、両者を分けるポイントがいくつかあることに気づきます。
アパート経営は1棟所有、マンション経営は区分所有・1棟所有どちらも
マンションは、1棟の中で複数の区分所有者がいるケースと、金額はかかりますが1棟を所有するケースがあります。全体件数としては区分所有が多いですが、1棟を所有するケースもあります。それに対して、アパートの大半は1人のオーナーが1棟を丸ごと所有しています。
また、1棟所有と区分所有では、物件の建築、維持管理、建て替えなどの意思決定に大きな違いが生じます。区分所有の場合は、何事も合議により決定します。建築時点でいろいろな取り決めを行っていても、竣工後に新たな問題が発生し調整を要することもあります。1棟所有であれば法令に抵触しない限り、自分の好みで物件を建てたり改修したりできるのでオーナーとしての自由度が高くなります。
建物の区分所有等に関する法律第62条第1項の規定により、共有物件は区分所有者数と議決権数の各80%以上の賛成を得れば建替えられます。もっとも区分所有者が増えれば利害関係が複雑になり、80%の同意を得るまでに相当な時間を要します。逆に区分所有者が数名の場合も、1〜2名の反対で計画が頓挫することもあります。
入居期間や設備はアパートとマンションで違いがあるのか?
実は、入居期間についてはアパート、マンションという形態との関係性は薄く、むしろ「単身者用」か「ファミリー用」かにより傾向が変わってきます。「単身者用」は「ファミリー用」と比較し、短期間で住人が入れ替わる傾向があります。進学、就職、結婚などのライフステージの変化に応じて住み替える人が多いからでしょう。
内容や設備も廉価にして、入居者の入れ替わり時に修繕・交換するケースが一般的ですが、最近では「単身者用」の物件でも内容や設備のグレードを上げ差別化を図る物件も見られます。
一方、「ファミリー用」は相対的に住民の移動は少なくなります。なぜなら、転居により子どもの通学や進学に影響が出ることを避ける家庭が多いからです。こうした事情を踏まえて、賃料なども長期入居を想定した上で設定します。
分譲型マンションであれば、その傾向はさらに強まります。物件全体でみると、居住目的で購入するオーナーが多く、より長く住むことに適しているからです。設備も長期にわたり利用できるグレードの高いモノが設置されます。
上記からわかるように、アパート、マンションという形態ではなく、「単身者用」「ファミリー用」などのようにターゲットをきちんと明確にしたうえで、家賃や敷金、礼金、更新料を設定することが重要となります。また、設備に対してもターゲットを選定して導入の有無を検討することが大切です
アパート経営は中期投資、マンション経営は長期投資
一般的にアパートはマンションと比べ物件規模が小さく、簡素な構造となります。このため構造物としての寿命はマンションより短くなります。タワーマンションのように100年間居住することは想定されていません。
税額算定に用いられる住宅用建物の耐用年数(減価償却期間)は、「木造」22年、「鉄骨」34年、「鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造」47年です。
アパートの構造はさまざまですが、マンションは「鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造」なので、税務当局もマンションの方が長持ちすると考えていることが分かります(ただし、建物寿命と構造材料の相関関係は低いという研究報告もあります)。
投資の観点からアパートとマンションの相違を突き詰めれば、中期投資と長期投資の違いになります。機動性が高く回収期間の短いアパートと、安定的で回収期間の長いマンションと言えるでしょう。
不動産投資で失敗しないためには、このような違いを論理的に把握することも大切です。
【失敗しないコツ】シリーズ
・アパート経営で失敗しないコツ #2(物件編)
・アパート経営で失敗しないコツ #3(立地・環境編)
・アパート経営で失敗しないコツ #4(資金調達編)
・アパート経営で失敗しないコツ #5(家賃編)
・アパート経営で失敗しないコツ #6(管理編)
・アパート経営で失敗しないコツ #7(災害編)
・アパート経営で失敗しないコツ #8(売却・建て替え編)
・アパート経営で失敗しないコツ #9(総括編〜資産形成に向けて〜)